お役立ちコラム
「最先端の診療をエキスパートから学ぶ!心不全症例相談会vol.2〜重症心不全編〜」セミナーレポート

心不全に詳しい専門医の方が周りにいない、または他の専門医の意見も聞きたいと思われたことはありませんか?
専門医にオンラインで相談ができる「E-コンサル」を提供するMediiでは、専門医を講師にお招きしてE-カンファ(オンラインセミナー)を開催しています。
今回は、「最先端の診療をエキスパートから学ぶ!心不全症例相談会vol.2〜重症心不全編〜」として、
東京大学大学院医学系研究科 重症心不全治療開発講座 特任准教授 網谷英介先生と、
東京大学医学部附属病院 循環器内科 助教 石田純一先生
にご登壇いただき、視聴参加いただいている医師の皆さまから事前、およびリアルタイムで寄せられた心不全の患者さんについてのご相談にお答えいただきました。
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それでは、主治医の先生方からのご相談と、網谷先生および石田先生からご教示いただいた知見を一部ご紹介します。
目次
相談①:繰り返す心不全に対するベルイシグアトの使い方
主治医の相談:症例は80代男性。
拡張型心筋症を背景とした慢性心不全で入退院を繰り返しています。
心保護薬であるARNI、 β遮断薬、MRA、SGLT2iを導入し、さらに CRT-D植込み術を施行するも、KCCQスコアやADLは低下傾向で現在自宅歩行のみ可の状態です。
現状、血圧低下や腎機能低下は認めず、さらなる心不全コントロール目的としてベルイシグアトの導入を検討しています。
本症例においてベルイシグアトの適応および導入、フォローにおいて先生方のご経験を踏まえてご意見賜れますと幸いです。
石田先生:恐らく多くの先生がこういった患者さんを診られたことがあり、治療も非常に難しいと思います。
血圧低下や腎機能障害が伴っていることが多く、難渋する点の一つだと思いますが、この方はないとのことですね。
EFの記載がありませんが、拡張型心筋症が背景にあるとのことで、HFrEFと考えます。
ベルイシグアトはご相談に記載されている四つの薬剤が最大耐用量まで導入済で、左室駆出率が40%以下であれば検討しうると思いました。
ただ、年齢が気になりました。
多くの心不全の臨床試験では年齢の中央値が60代〜70代くらいですので、少しそこから外れかかっているように思います。
ご存知の通り、80代と一言で言っても元気な80代もいればフレイルの強い80代もいるため、その評価も含めての判断になります。
この患者さんは自宅歩行のみのためなかなか難しいかもしれませんが、ある程度の薬剤導入を検討しているのであれば、次の一手としては良いかと思うものの大きな効果は期待できないかもしれません。
あともう一点、ご相談に記載の4薬剤(ARNI、 β 遮断薬、MRA、SGLT2i)は、早期導入する方が治療効果が期待できるものであり、80代ですとそれらの心不全治療のメリットは徐々に薄くなってきます。
ベルイシグアトの導入は、私も次の一手として考えなくもないですが、上述の点を鑑みて、できればもう少し若い患者さんに使いたいところではあります。
あとは、ARNI、 β遮断薬、MRAの3つの薬剤に関しては用量依存性が期待されますので、十分確認いただきながらの投薬となるかと思います。
網谷先生:私が気になるのも石田先生がおっしゃった患者さんの背景ですね。
80代男性で、かつ現在自宅歩行のみ可の状態ですと、ベルイシグアトを投薬しても、自宅から出られるようになるまでの改善は難しいと思います。
そこで、非薬物療法としてリハビリテーション運動療法を促す工夫も並行して進めるのがよいと考えます。
また、この患者さんが独居なのか、ご家族と住んでるのか、そのご家族は若いのか、という情報が可能であれば欲しいです。
ご家族の余裕によって心不全の管理は左右されますので、薬物導入に走りがちではありますが、社会環境の調整が最も重要であるとも思います。
社会環境が分かったとしても介入が難しい場合も多いとは思いますが、介入できるところを探すことも重要であると感じました。
相談②:心アミロイドーシスでNYHAⅢの高齢男性の治療方針
主治医の相談:以下の症例の治療方針について苦慮しており、質問させていただきました。
患者さんは70代男性、NYHAⅢの心不全症状で精査を行い、ピロリン酸シンチグラフィーの結果アミロイドーシスが疑わしく、心筋生検結果でアミロイドの沈着も認めており、心アミロイドーシスの診断を得ておりますが、患者様は高額な医療や治療介入にやや否定的であり対処的な治療を望んでおられます。
しかしビンダケルやビンマックなど、有効な薬剤がある中で、そうした専門病院での治療適応の有無の判断が望ましいと考えておりますが、NYHAⅢ、Ⅳにも近い症状であり、紹介したとして薬剤の有効性や予後改善とまで見込めるかどうか、進化期でありこちらも躊躇をしております。
ビンダケルなどの治療が可能な医療機関ではNYHAクラスが進行した患者に対しての特異的治療薬の導入を行っているか、またそうした患者の紹介は適切なのかをご判断いただきたくご紹介させていただきました。
網谷先生:確かにNYHAⅢ以上は効果が見込みにくくはありますが、Ⅳまで進行していなければ我々の施設では検討しています。
主治医判断の部分もありますし、施設によっても多少違うかもしれませんが、見込みがないからと一律判断してるわけではありませんので、紹介いただければ判断をしてお戻しすることは可能です。
ただ、患者さんご本人がそもそもこのような治療に否定的であるならば、強く説得してまで専門医療機関へ連れて行くべきかどうかについては、個人差はあれど私自身はご納得いただいて治療すべきだと思います。
高齢でADLがかなり低下してる方で、ピロリン酸シンチグラフィーで陽性だったために紹介されることも多いですが、ご本人に聞くと、なぜ我々の施設に来たのか全く分からないとおっしゃる方もいらっしゃいます。
そのような方の気持ちを正反対に変えるほどの効果はやはり難しいと考えます。
ですので、主治医の先生でご説明いただくか、説明が難しい際はもちろん我々から説明するとしてご紹介いただくことは非常によいと思います。
一方で、非常に効果的なのでこの薬剤を使わないと損であるとまで、あらゆる患者さんに言えるほどの治療ではないとも思います。
石田先生:私もまったく同じ意見で、やはりご本人が治療を理解し希望されているということがまず必要だと思います。
適切な情報を提供することはもちろん重要なことなので、「タファミジスという薬剤が施設認定制なのでその説明からどうですか」という形でご紹介はよいかもしれませんが、そもそも患者さんが十分理解されていた上で否定的であれば、無理して紹介いただかなくてもよいのではないかと思いました。
このご相談をいただいた先生も十分ご理解されていることとは思いますが、心不全重症度が進むと薬剤の有効性も得がたくなる治療薬なので、そもそもNYHAⅣと診断されてしまうと適用外と判断されてしまいます。
Ⅲだからといってまったく効果が期待されないということではないと思いますし、私がよく判断の材料としているもので、歩いて通院できるか否かということがあります。
そして、心不全全般的に言えることですが、薬剤の管理は注意して行っています。
相談③:低血圧状態の患者さんへのACEI/ARB、ARNIの導入や増量
主治医の相談:重症心不全の患者様には低血圧状態の方も多いと思いますが、血圧をどこまで認容し、ACEI/ARB、ARNIの導入や増量を行うのがよろしいでしょうか?
網谷先生:我々が治療している中で、比較的高用量のβ遮断薬を投薬している拡張型心筋症重症高い方は、収縮期血圧が80mmHg程度の方が多い印象です。
薬剤を増やす段階で収縮期血圧が70mmHg台の方も症状がなければ、あるいは例えばクレアチニンが上がってきても臓器障害がなければそのまま様子を見ていることが多いです。
60mmHg台が見え隠れする方もいらっしゃいますが、ARNIに関しては、血圧低下によって状態悪化することが多いので、血圧80mmHg台を一つのラインとして少しずつ増やしていくということを目指します。
血圧70mmHg台が見えているときに積極的にARNIを増やしていくかというと個人的には勇気がありません。
石田先生:まったく同感です。両薬剤とこのRAS阻害薬は大変重要だと思いますが、やはり血圧と腎機能がネックになり増量が難しいという患者さんを、特に重症心不全の方だとしばしば見かけます。
ACEIやARBが投薬されていて血圧が80mmHg前後の患者さんで、ARNIに進むのが少し躊躇されるものの、効果が出れば更なるリバースリモデリングが期待できるのかもしれないという場合は時々あります。
ですので、一度行ってみて効果がなければ撤退というのもよいのかもしれませんが、あまり無理をしないというのが現状では一番重要かと思います。
相談④:ECMO使用中における体液量管理
主治医の相談:ECMO使用中における体液量管理の目安があればご教授ください。
網谷先生:ECMOの対応をされるのは救急の先生が多いかと思うので、救急の先生方に気をつけていただければと思う部分をお話しします。
ECMOは基本的に大腿動脈から送血する形が中心かと思いますが、特に左室には後負荷になるので、左室の負荷に耐えられない場合は肺水腫増悪を招いてしまいます。
例えば、ECMOのフローが回らないからと、血漿製剤や輸血をたくさんされることも多いと思いますが、結果として肺が鬱血する可能性があると思います。
ですので、インペラまで入れられないのであれば、胸部レントゲンをこまめにチェックいただきたいです。
一日経たないうちに肺が真っ白になってしまうことが時々あります。
特に心筋炎は軽度のうっ血から翌日真っ白に増悪して、手のつけようがなくなることがあります。
心筋炎の患者さんでECMOだけで回っていると思っても、IABPだけは可能であれば追加してくださいとご案内することもあるので、体液量だけでなく、肺水腫の状況に注意をお願いします。
ECMOのフローが回り、腎臓の機能などのパラメータが維持できていることは重要ですが、それを維持しようというばっかりに、体液量が増えてしまうことによるデメリットがあることは気にしていただくことが重要かと思います。
石田先生:我々が診る患者さんは基本的に心臓が悪いのが前提なので、VA-ECMOによる左心負荷の亢進が非常に心配になります。
実際にあっという間に悪くなってしまう患者さんも多々経験してるので、左心のサポートはぜひ念頭に置いていただきたいです。
ただ、心臓に問題がなく心臓以外の何らかの理由で低酸素になっていて、その改善が必須という状況でECMOを使うことに関しては、ボリュームも含めて心臓も余力がありますので、そこの線引きも大事かと思います。
心不全の方については、やはり循環器内科の専門医と協議しながら進めていただくとよいのかなと考えます。
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Medii編集部より
今回は、寄せられた質問に対し、お二方が惜しみなく知見をご共有くださったE-カンファの一部をご紹介しました。
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ぜひ、このご機会に診断や治療にお悩みの患者さんについてご相談いただけますと幸いです。
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(文責:Medii編集部)







