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患者さんと共に歩む神経免疫疾患専門医・櫻井謙三先生が語る信念と未来への挑戦

Doctor’s Voice

2024.11.19

患者さんと共に歩む神経免疫疾患専門医・櫻井謙三先生が語る信念と未来への挑戦

日本神経免疫学会の評議員であり、神経免疫疾患の専門医として多方面で活躍されている聖マリアンナ医科大学脳神経内科 講師の櫻井謙三先生に、医師としての信念や神経免疫疾患をご専門に選んだ経緯、その背景にある想いについてお話を伺いました。

1分でわかる記事のPoint

  • 櫻井先生は、医療は単に病気を治療する場ではなく、患者さんがより良い生活を送るためのサポートを提供する場所であると捉え、「患者さん目線を第一に」という信念を大切にされています。

  •  脳卒中の専門から転向し、QOL向上に直結する神経免疫疾患の魅力に惹かれ、治療が患者さんの生活に大きな変化をもたらすことにやりがいを感じておられます。

  •  YouTubeでの情報発信により、患者さんが自ら選択し行動できる世界を後押ししたり、患者さんのQOLを可視化するためのバイオマーカーの探索に取り組んでいます。

  • オンライン診療や日常に溶け込む治療環境の整備など、患者さんが生活の延長線上で治療を受けられるような革新を目指しておられます。

お話を伺った先生

聖マリアンナ医科大学脳神経内科  講師

櫻井謙三 先生

目次

  • 「患者さん目線」を大切にしたい。"生活の上"に治療がある

  • QOL向上のための多くの工夫や研究ができる神経免疫分野の魅力

  • 仲間がいないなら「外」に出て仲間を作ればいい。沢山の先生方との繋がりで今がある

  • 患者さんにすべての情報を届けることが治療のスタート。Youtubeを通じて、患者さんへの情報提供を開始

  • 起業が今後の目標。誰かにやられる前に、自分でやりたい

  • 神経免疫領域はまだまだ面白い。治療の次には「もう一歩深いところ」に踏み込みたい

「患者さん目線」を大切にしたい。"生活の上"に治療がある

ー櫻井先生の医師としての信念(モットー)を教えてください

僕のモットーは「患者さんの目線を第一に考えること」です。患者さんが病院に来る目的は、病気のためではなく、幸せに生活するためであってほしいんですよね。ですから、診療時間は患者さんにとって意義のある時間であることが大切だと考えています。僕が患者さんだったらどのような治療を受けたいかという視点を常に意識し、治療方針も最終的には患者さん自身に決めていただくというのが基本の姿勢です。「あなたが主役です」という考え方を大切にしながら、患者さんの生活を第一に考えた治療を提供していきたいと思っています。

ー患者さんの意思よりも治療メリットを優先しなければならない時はどうされるのですか?

治療の「重み付け」が必要なんじゃないですかね。やらなきゃいけない線、一定の線はあるので、そこはやはり医療としてやるべきです。だけど、1から10まで絶対にやらなきゃいけない、なんてことはなくて、さらに、「今」なのか「後」なのかっていうのも、100%の正解はおそらくないと思うのです。

ですから、一定のところまでは医師がイニシアチブを持ってやる。でも、余裕をもって選択できる段階になれば、あとは一緒に考えようっていうのがいいんじゃないかなと思います。何か僕らが「これをしなさい」と決めつけても、満足度が下がるだけで、結局、治療が続かなくなるなど、良いことはないと思います。

QOL向上のための多くの工夫や研究ができる神経免疫分野の魅力

ー櫻井先生が神経免疫を専門に選んだきっかけを教えていただけますか?

もともと脳卒中を専門に診ていましたが、分院に異動になったとき、そこでは脳卒中は脳神経外科で診ていて、やることがなくなったんです。頭痛とか認知症とか、いろいろ専門医をとったりして勉強していた中で、ある日、外来に多発性硬化症が多いなって気がついたんです。そこから、多発性硬化症をちょっと勉強しようと思ったのがはじまりでした。

当時は、治療法が次々に登場していた時期でもあり、製薬会社さんの勉強会への参加やそこで知り合った先生方との出会いによって、神経免疫領域の面白さに惹かれるようになりました。特に、この分野では患者さんのQOL(生活の質)を向上させるために多くの工夫ができるところが魅力でしたね。

ー神経免疫疾患の分野にはどのようなやりがいを感じていますか?

神経免疫疾患の治療では、効果が大きく現れることが多く、その分、患者さんからも大きな感謝をいただけることが多いです。例えば、治療を通じて患者さんの生活が大きく改善されたときには、やはり「この分野を選んで良かった」と感じます。まだまだ研究段階の治療法も多く、バイオマーカーの確立も途上ですので、医師としての貢献の場が多く残されている点も、神経免疫のやりがいですね。

仲間がいないなら「外」に出て仲間を作ればいい。沢山の先生方との繋がりで今がある

ー 神経免疫の専門家が少ない中で、どのように知識やスキルを深めていかれたのでしょうか?

所属していた医療機関には神経免疫を専門とする医師がおらず、指導者がいない状況でしたが、外部の勉強会に参加し、そこで知り合った先生方から知識を得ていました。基盤がないから神経免疫をやるのは無理だと言われていましたが、そうは言っても患者さんはいるし、やらないわけにもいかないからやろうよ、と動き出しました。仲間がいないなら、仲間を作りに行けばいいと思い、外の勉強会で積極的にたくさんの先生と知り合っていきました。

特に慶應大学の中原仁先生との出会いが大きく、初めて講演を聴いたときに「自分もこの道で学び続けたい」と思うようになりました。ほかにも、日本医科大学の酒巻雅典先生は、僕にとって大きな支えになってくれました。最初は独学で学んでいましたが、酒巻先生が親身になってサポートしてくださり、そこから他の専門医の先生方とも知り合うことができました。最初は不安も大きかったのですが、こうした方々のおかげで自信を持って取り組めるようになりましたね。

ーこれから神経免疫疾患の分野に挑戦しようとされている先生へのアドバイスはありますか?

今も、神経免疫疾患なんて稀な分野は、一部の医療機関でしか専門的にやっていないので、多くの若い先生たちは、周りに指導者がいない中、基礎的な基盤もない中で神経免疫に入ろうとされていてるんじゃないかと思います。

僕も初めは勉強会に参加しても知り合いが誰もいなかったので、自分から声をかけるしかありませんでした。東北医科薬科大学の中島一郎先生は、たまたま同じホテルでチェックインの列で前に並んでいたときに声をかけたんです。

ーそうやってナンパされたんですね(笑)著名な先生方にお声がけをされることにためらいはありませんでしたか?

やっぱり僕だってどうやって話したらいいかわからなかったんですけど、喋らなかったらそのまま帰ってくるだけですから。それじゃ参加する意味がないなと思って、講演会に参加したら必ず1人の先生には喋りかけて知り合いになるって決めて挑んでいました。あとは懇親会でお酒を飲んだりするので、緊張は自然と解けましたね。そのままお酒の力で仲良くなります(笑)。

患者さんにすべての情報を届けることが治療のスタート。Youtubeを通じて、患者さんへの情報提供を開始

ー櫻井先生はYouTubeでの情報発信もされていますが、そのきっかけを教えてください。

多発性硬化症は薬の種類がたくさんあるので、外来で患者さんに薬の説明をすると時間がかかることが多く、限られた診療時間内にそれぞれの薬の作用やメリット・デメリットのすべてを理解してもらうことも困難でした。そこで、YouTubeで動画を作成すれば、患者さんは事前に情報を得ることができ、診療では患者さんからの質疑応答や相談の時間を十分に確保できるのではと思い、はじめました。多くの方が視聴してくださっており、役立っていると感じています。

今は、さらなる目的のために配信を続けています。それは、患者さんが良い医療を受け取るために、自分で動ける世界観です。患者さんがある程度自分の治療方針の希望をもって主治医と相談ができる。患者さんが納得できなければ、別の医師にかかる、という選択肢を与えるきっかけになればと思っています。

ー YouTubeをみて、遠方からいらっしゃる患者さんもおられるとお聞きしました

外来で「YouTubeを見て相談したい」という方のための外来枠も設けています。遠方の方も多く、例えば大阪や兵庫からわざわざ来てくださる方もいます。

わざわざ遠方からいらっしゃる方って、やっぱり難しい状況なんですよね。難しくて、専門じゃない先生からは、「様子を見ましょう」って言われてしまうような患者さんです。でも様子見ましょうって言われた先に何があるかというと、決して良くはなりません。

僕の外来に来る患者さんは、主治医からの「様子見ましょう」を十分に経験している方々ですから、様子を見ないで何かしらの介入をするようにしています。また、僕の講演でも必ずお伝えするんですが、「あなたは重症筋無力症ではありません。」という一言は最後の最後まで言いません。その一言ですべての可能性が断たれてしまいますから。これは、すべての脳神経内科医にお願いしたいことです。

起業が今後の目標。誰かにやられる前に、自分でやりたい

ー 櫻井先生個人の今後の目標や展望はありますか

オンライン診療の可能性を広げて、患者さんがより簡単に治療を受けられる環境を作りたいと思っています。たとえば、駅に点滴スペースを設け、日常の生活と治療が並行できるような仕組みなど、病院に来るだけでなく、生活の延長線上に医療があるというイメージです。

オンライン診療は、特に遠方の患者さんにとっては非常に価値があります。対面診療にプラスして、オンライン診療でもフォローすることで、患者さんの通院負担を軽減できますし、ハワイなど海外からのオンライン診療ができれば、時差をうまく使って、患者さんの就労後に診療するなども可能かもしれません。

色々構想していますが、法的な課題もあるため、しっかり検討していきたいですね。

ー すべて患者さんの目線、生活の上に治療があるという櫻井先生の信念に基づくアイデアですね

初めは、病院の長い待ち時間を楽しい時間にできないか、と考えていたんです。待合室に足湯を作るとか、バーを作るとか真剣に考えていました。

でも結局、一番は病院に来なきゃいいんだって思ったので、病院に来ないでいい医療の提供の仕方を実現したいという大きな夢になりました。色々な医療ITのツールを駆使して実現していきたいです。そのひとつとしてMediiのE-コンサルにも期待しています。

神経免疫領域はまだまだ面白い。治療の次には「もう一歩深いところ」に踏み込みたい

ー 先生が現在注力している研究テーマについて教えていただけますか

今は多発性硬化症で、スマートウォッチなどを使って、髄液検査や血液検査などではわかり得ないもの、例えば「疲労」とか「痛み」とかを数値化して、バイオマーカーとなり得るものを見つける研究に取り組んでいます。

「病気が良くなった」、「疾患活動性が低下した」ではなくて、患者さんのQOL、生活が良くなったかどうかを可視化して、アプローチしたいと思っています。たくさんの治療法が登場している中で、「病気の治療」のもう一段階「先」を目指したいと考えています。

ー 神経免疫疾患をご専門として目指される若手の先生方へのメッセージをいただけますか

現在、神経免疫は非常に熱い分野です。新薬がどんどんと出てきて、しかも、治療の効果がわかりやすく非常に大きい。医師のたったひとつの選択で、患者さんの生活や人生を大きく改善できるかもしれないんです。

多分、医師にとってこれほどのやりがいは、他にはなかなかないんじゃないかなと思うんです。とても稀な分野ですから、神経免疫分野の知識や経験を習得しても、たった一人の患者さんにしか使えないかもしれません。それでも、その一人には、すごく喜ばれるし、役に立つことができる。それってすごく魅力的なんじゃないかなと思っています。

その一人を救うために、僕もE-コンサルの回答医として、先生方の手助けができればと思っていますので、ぜひ、気軽にご相談いただければと思います。


櫻井先生にご協力をいただいているE-コンサル症例相談窓口

【神経免疫疾患全般】

<神経免疫疾患 相談窓口(けんぞぉ先生相談窓口)>

日本神経免疫学会 評議員であられる、聖マリアンナ医科大学脳 神経内科医長 櫻井謙三先生と神経免疫学を極めるべく募った先生方が、MS/NMOSD/MGを中心に神経疾患の症例相談、臨床疑問にお答えします。

ご相談はこちらから https://e-consult.medii.jp/NewChatRoom

※ログイン画面が開きます。初めての方は「新規登録はこちら」にお進みください。

【MS/NMOSD/MOGAD】

<MS/NMOSD/MOGAD 専門医>

多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎(NMOSD)、MOG抗体関連疾患(MOGAD)についての症例相談をお引き受けします。多発性硬化症・視神経スペクトラム障害診療ガイドライン2022作成委員を務められた深浦彦彰先生など7名の脳神経内科のエキスパートの先生方にご相談いただけます。

ご相談はこちらから https://e-consult.medii.jp/NewChatRoom

※ログイン画面が開きます。初めての方は「新規登録はこちら」にお進みください。

<【日本神経免疫学会員限定】多発性硬化症(MS)/視神経脊髄炎(NMOSD) 専門医>

日本神経免疫学会員限定で、櫻井先生や、その他の評議員の先生方へご相談いただけます。ご相談は実名相談のみとさせていただいております。

ご相談はこちらから https://www.neuroimmunology.jp/members/

※日本神経免疫学会員専用ページが開きます。当相談窓口へのご相談には日本神経免疫学会へのご入会が必要です。

【MG/LEMS】

<【日本神経免疫学会員限定】重症筋無力症(MG)/ランバート・イートン筋無力症候群(LEMS) 専門医>

日本神経免疫学会員限定で、櫻井先生や、その他の評議員の先生方へご相談いただけます。ご相談は実名相談のみとさせていただいております。

ご相談はこちらから https://www.neuroimmunology.jp/members/

※日本神経免疫学会員専用ページが開きます。当相談窓口へのご相談には日本神経免疫学会へのご入会が必要です。


櫻井先生にご登壇いただいているセミナー

貴重な専門医の知見や経験を提供する取り組みのひとつとして、E-コンサルにご協力頂いているエキスパート専門医の先生方を講師としてお招きし、定期的にオンライン症例カンファレンスを開催。E-コンサル会員限定でアーカイブ視聴いただけます。

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