お役立ちコラム
アメリカにおける「E-コンサル」の事例と有効性

疾病の研究が進み、現場では患者の対応において高い専門性と経験が求められています。しかし、1人の医師がすべての領域を網羅するのは不可能で、特に専門性の高い領域においては、その専門医の数も多くはありません。専門医による診察のニーズと実際の専門医のミスマッチは、地域医療の現場において顕著となっています。
このような課題に一石を投じるのが、最近エビデンスが蓄積されてきている【eConsult】です。
eConsultとは、主治医が患者のケアに必要な知識や経験を指導してもらう目的で、オンラインプラットフォームを通じてより詳しい専門医に質問をすることです。
eConsultのプラットフォームを立ち上げた医療機関では、その利用が急速に増加しており、例えばロサンゼルス州保健サービス局では、システムの開始から3年で毎月12,000件を超えるコンサルテーションが寄せられるようになりました。[1]
eConsultの利点として、専門医診察へのアクセスの向上、コンサルテーションを通じたプライマリ・ケア医教育、医師間のコミュニケーションの向上などがあります。しかし、eConsultは対面診察を避けなければ、医療費増加につながるだけの付加的なサービスになってしまう可能性があります。
そこで、サービスの有用性と適切性を調べた研究を紹介します。
(※この記事は2022年3月にMediiの公式noteで公開した記事の転載です。)
目次
eConsult利用後の受診回避率81.2%
本研究ではサービスの有用性と適切性を評価するために「eConsultによる受診回避」と「質問の適切性」という指標を定義しました[2]。
研究が行われたのはマサチューセッツ総合病院などの高度に専門化した病院や地域医療センター、一般診療所を含むPartners HealthCare System(PHS)の米国最大級の医療ネットワーク(約600万人の患者にサービスを提供)が管理するeConsultシステムです。
このシステムは、2016年4月~2019年7月の期間で、既に45,000件のコンサルテーションが完了しています。PHSのeConsultプラットフォームは、メッセージによる医師間のコミュニケーションにのみ限定され、医師から患者へのコミュニケーション、電話チャット、ビデオチャットの機能はありません。
有用性の指標である「eConsultによる受診回避」とは、専門医によるコンサルテーションが完了した後、120日間同じ専門領域の医師に直接受診がないものと定義しました。
事前に幅広い専門分野を含むシステム全体のデータを解析して、eConsultの件数が多く、受診回避率にばらつきのある5つの専門科(精神科、感染症科、血液内科、膠原病科、皮膚科)を選択し、2017年10月から2018年11月までのデータからランダムに750件を選択し、コンサルト記録を複数名でレビューしました。(実際にはデータの欠損で741件が解析されました。)

受診回避割合は5つの診療科全体で81.2%(5289/6512件)、個別でみると精神科 92.6%、感染症科 87.6%、血液内科 86.0%、膠原病科 65.2%、皮膚科 61.9%という結果でした。
eConsultをした理由
治療に関する質問
診断に関する質問
プライマリ・ケア医がさらなる教育を求めた質問
患者からの問い合わせ
専門分野によっても理由は異なり、精神科では治療に関する質問が93.0%を占め、膠原病科では診断に関する質問が88.4%でした。一概には言えませんが、eConsultした理由の違いが、最終的な受診回避率につながった可能性があります。また、膠原病科や皮膚科のように、直接関節や皮疹等を診察する必要性があるといった診療科の特性を反映しているのかもしれません。
診療科によって多少ばらつきはありますが、eConsultによりこれだけ専門医の受診を回避することができれば、不要な専門医の対面診察を減らし、また対面診察を必要とする患者の待ち時間を減らすことに繋がります。そして専門医を受診するために患者が移動する負担も軽減することができ、遠方の専門医療機関の受診が必要なケースでは特に大きな効果を発揮できるでしょう。さらなる研究でeConsultとマッチする診療科もわかってくるのではないでしょうか。
「質問の適切性」の4つの評価
これまでのeConsultの有用性に関する研究では、受診回避率や専門医が回答するまでの時間短縮などを評価するだけでした。本研究ではeConsultの有用性に「質問の適切性」を結びつけました。
「質問の適切性」を評価した理由は、受診回避に及ぼす影響を把握するための効果的な指標がなかったことや、受診回避率だけでは例えば「プライマリ・ケア医が自分でガイドライン等を調べる代わりに専門医が質問に答える」といった事例を考慮することができなかったためです。「質問の適切性」は以下の4つの点で評価されました。
各種学会のガイドラインや広く利用可能なエビデンスに基づく資料(UpToDate®)などを参照すれば解決する簡単な質問か。
例)長時間の移動後に発症した初発の深部静脈血栓症に対する抗凝固療法の期間は?単なる医療施設に関する質問等、医師が答える必要のない質問か。
例)自院で行ったパンチバイオプシーの検体をどこに送ればよいですか?eConsultを介さずすぐに専門医受診を促すべき緊急性のある質問か。
例)関節炎と胸膜炎があり、全身性エリテマトーデスの再燃と思うのですが、どうしたらよいですか?外来通院で対応できますか?患者の状況をeConsult形式で扱うには複雑すぎる質問か。
例)〇〇さんは7年前に嚢胞性線維症で肺移植を受けている43歳女性で、アスペルギルス肺炎とカンジダ症を合併し、発熱を繰り返している患者です。
上記のいずれかに当てはまる質問はeConsultとして不適切と定義しました。
今後のeConsultの展望
eConsultの適切性をコンサルト記録のレビューにより行ったところ、741件のうち520件(70.2%)が適切と判断されました。適切とされた割合は、60.5%(膠原病科)から77.9%(精神科)の範囲でした。適切でないと判断された理由の多くが、ガイドライン等の確認不備とeConsultで解決するには複雑すぎるということでした。
この論文の著者らは、eConsultの適切性を理解することは有益で、適切性を改善することができれば、eConsultの有用性はさらに高まると考えています。
今後、eConsultプラットフォームを導入・改良する際には、上記のような基準をeConsult利用のガイダンスとして設けるとよいかもしれません。仮に適切でないと判断されたコンサルテーションも、データとして蓄積し、よくある質問という形式での提示や専門医に対面診察を依頼すべき事例として紹介することは、プライマリ・ケア医への教育において有益と考えられます。
例えば、膠原病科でよくあるeConsultの質問として「抗核抗体価が単独で陽性である場合、どのように評価すればよいか」というものがあり、これに対しては「抗核抗体上昇の集団有病率」について回答されます。しかし、「抗核抗体陽性で関節痛がある患者の診断」についてアドバイスを求めた場合は、膠原病専門医は状況の複雑さが増すと考え、対面診察を求めることがあります。この「抗核抗体上昇」に関するガイダンスをeConsultプラットフォームに提示することで、プライマリ・ケア医はeConsultにするのか、それとも対面診察を依頼するのかを検討することも可能です。
また専門医に質問する前に確認すべきこと、といったトピックの提示も質問者側にとって有益な情報となりえます。実際によく知らない領域の疾病を診療する時、専門医にとっては当たり前のことすら知らずに専門医に意見を求めたくなることがあります。そういう時にも、今までのコンサルテーションの事例集やよくある質問があると非常に便利であり、より的確なコンサルテーションを行うことができるのではないでしょうか。
まとめ
今回の研究の結果、eConsultは従来の対面診察と比較して、効率的なケアモデルであることが示されました。また診療科によって受診回避率や適切性が異なることから、eConsultに適合性の高い専門診療科があることもわかりました。
eConsultは専門医へのアクセスを改善するための効果的で患者中心のアプローチと言えます。適切なeConsultは対面診察の必要性を減らし、それによって患者と医療従事者のコストと時間を削減することが可能です。今回の研究は、医療システムが統合された大規模医療ネットワーク内で行われましたが、Medii「E-コンサル®」でも代替可能と考えられます。より大きなネットワークを構築することが可能であり、プライマリ・ケア医が日本のどこにいても、全国の専門医からアドバイスを受け、患者が最適な医療を受けられる環境が整う未来はそう遠くありません。
執筆者:Dr.心拍
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Medii編集部より
医療現場における課題のひとつとして、地域や専門分野によって、患者さんが必要とする適切な専門医の診察を迅速に受けることが難しいケースが依然として存在します。そういった環境の中で、目の前の患者さんと向き合っていらっしゃる主治医の先生方の中にとっても、eConsultは、その解決策として非常に有用な手段であることが研究からも示されています。
Mediiが提供する「E-コンサル」では、信頼できる専門医のアドバイスを無料で、迅速かつ効率的に受けることが可能です。自身では解決するのが難しい症例があった際には、ぜひ一度E-コンサルをお試しください。
参考文献
[1] Barnett ML, et al. Los Angeles safety-net program eConsult system was rapidly adopted and decreased wait times to see specialists. Health Aff (Millwood). 2017;36:492-499
[2] Ahmed S, et al. Utility,Appropriateness, and Content of Electronic Consultations Across Medical Subspecialities. Ann Intern Med. 2020;10:641-647
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