お役立ちコラム
救急医療現場における遠隔専門医相談の可能性とは? 【第53回日本救急医学会総会・学術総会 発表報告】

2025年10月28日、第53回日本救急医学会総会・学術総会 において、Mediiの筧みなみ医師が「救急医療現場における遠隔医療コンサルトの利用実態と可能性」というテーマで発表を行いました。
救急医療の現場では、迅速な判断と多診療科との連携が求められます 。しかし、地域や時間帯によっては救急体制の整備が難しく 、限られた医師に負担が集中してしまう状況も少なくありません。
Mediiが提供する「Medii Eコンサル」は、医師がスマートフォンやPCから、臨床的な疑問を匿名でその分野のエキスパート専門医にオンラインで即時に無料相談できる遠隔専門医相談システムです。
本発表では、救急科、ICU・集中治療科医師によるMedii Eコンサルの利用状況を分析し、その有効性と今後の活用可能性について報告しました。
研究の方法
「Medii Eコンサル」へ投稿された救急科所属医師 、およびICU・集中治療科所属の医師からのコンサルテーションについて、後方視的に解析を行いました。
解析期間:2020年11月1日 〜 2025年4月30日(全1642日間)
対象コンサルテーション総件数:278件
結果1:コンサルテーションの発生時間帯
発生時間帯の内訳は以下の通りで、救急医が当直に入る時間帯と重なる準夜帯(16-23時台)の利用が最も多く 、夜間帯(0-7時台)にも一定の利用がみられました。
0-7時台:29件 (10.4%)
8-15時台:119件 (42.8%)
16-23時台:130件 (46.8%)
結果2:回答速度
コンサルテーション発生から回答までの時間中央値は41分 であり、2時間以内の回答率は79.5% 、24時間以内では95% と、救急領域においても迅速な回答体制が機能していることが示されました。
回答時間中央値:41分
2時間以内の回答率:79.5%
24時間以内の回答率:95%
結果3:コンサルテーション先
救急科医、ICU・集中治療科医から、どの診療科へコンサルテーションが寄せられたか分析しました。

コンサルテーション先は多岐にわたりましたが、特に循環器内科、血液内科、内分泌・代謝内科といった領域への相談が多くみられました。
考察:「現場判断」を支える伴走型支援
今回の調査から、遠隔専門医相談システムが救急医療現場において2つの側面から貢献しうる可能性が示唆されました。
1. 時間や場所によらない専門医アクセスの補完
夜間帯・休日帯にも一定の利用がみられたことから、限られた人員で運用されることの多い時間帯において 、専門医へのアクセスを補完できる可能性が示されました。また、コンサルテーション発生から回答までの中央値が41分であったことから、一定の即応性をもって機能していたと考えられます。
2. 教科書ではカバーしきれない「現場判断」への支援
コンサルテーションの内容を分析したところ、ガイドラインや教科書で示される標準的対応だけでなく、「現場での状況判断や対応の妥当性を確認したい」といった内容が多くみられました。
これは、教科書的知識だけではカバーしきれない「現場判断」への支援ニーズが存在することを示しています。遠隔専門医相談システムは、こうした現場医師の思考や判断を支える「伴走型支援」として機能する可能性があります。
結論と今後の展望
遠隔専門医相談システム「Medii Eコンサル」は、救急・集中治療領域において迅速な多診療科支援を提供し、実臨床で生じる意思決定プロセスに対して専門的支援を提供しうることが示されました。これは、地理的・時間的な専門医偏在や医療格差を緩和する有効な手段となりうるものです。
今回の調査は、救急科、ICU・集中治療科所属医師からの相談に限定しましたが、実際には内科医や外科医など多くの診療科の医師が救急医療体制に大きく貢献しています。今後は、救急医療体制に携わる医師全般に対象を拡大し 、臨床的有用性をさらに検証するとともに、蓄積されたコンサルテーションデータを資源化し、救急医学に還元していくことを目指します。
■ 発表者
筧 みなみ 医師(Medii)
島根大学卒、愛知県の南生協病院で臨床研修修了。医学生時代よりMediiの活動に参画し、臨床研修修了後の2025年4月より現職。





